›5 12, 2009

仕手相場

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仕手(して)という言葉を証券界隈で聞いたら大変なことになる。重大な犯罪であり、暴力団や総会屋や賭博の筋の人間の影を感じるほど恐ろしい言葉である。
かつては商品市場、株式市場と大物仕手筋が暗躍し、市場のある銘柄で賭博場と化して業界をにぎわしていた。
現在では様々な規制で表立って行動できないが、株式市場でもベンチャー企業にからんで暗躍している。
多いのが経営悪化のベンチャー企業の増資に絡んだインサイダー取引だ。

この本で繰り広げられる仕手相場は、かつて存在した乾繭取引市場における仕手戦だ。
乾繭とは、蚕が作った生繭を長期保存するために乾燥させた物の事で、着物や帯などの絹織物を作るための材料。市場が非常に小さく市場は実需とは無関係に投資家の思惑によって価格が決まるような世界だ。
売り方、買い方の仕手筋が基本的には騙しあい、時には協力し合い、証券会社も取引所も市場が賭博場であることを黙認して様々な物語が繰り広げられる。

止められない怖さ、金の怖さ、博打が止められない心理というのが物語を通して伝わる。

最近ではFX、株と一般人(無知な一般投資家)がこういった世界に多く入ってきている。株であれば特定の企業の株はもはや仕手銘柄として賭博場と化している。そんなところでは理論通りに株価は動かない。一般人はカモにされるだけだ。

仕手相場を読んで、市場の裏で繰り広げられる魑魅魍魎の世界がわかり、投資を行うということは常にこういったリスクがつきものであることを認識した。

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