›3 14, 2009

エネルギー|黒木亮

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サハリンBを中心として、複数のビジネススローリーが並行して展開する作品である。筆者の黒木亮の作品は他にもいろいろ読んでいるが、総合商社、都市銀行での経験と実話に基づくリアルな内容と高度な金融知識での小説の展開なので面白いだけでなく、非常に勉強にもなる。

商品(コモデティ)の中でもとりわけ重要な原油、LPGといったエネルギーに焦点をあて、黒木氏特有の実話を交えて複数の物語が交錯する。

新聞等の報道を見ると、この小説は実話を元にしていて、日々のニュースの裏で繰り広げられるビジネスが非常に泥臭いことが分かる。

海外プロジェクトファイナンスで、必死になってビジネスを成功させようとする者達のたくましさを感じられた。

小説の主人公は、上位総合商社の男であるが、大勢の人間(同じ組織、他の商社、海外企業)がチームとなって大きなビジネスを築きあげるしか、プロジェクトを成功させることができないことが良く分かる。

下位総合商社(後に大手自動車会社に呑みこまれる)の役員のイランへのコネクションと日本の官僚との癒着は、昔ながらの商社マン姿を感じさせられる。情報を取り動かすためにはワシントンのイスラエル・ロビイストを使うことも厭わない。

また主人公の妹が環境保護団体として主人公と利害が反する活動を行っているのが、その葛藤との戦いもある。

シンガポール市場での石油デリバティブに絡む物語も並行展開するが、こちらは最後までメインストーリーと絡むことは無かった。

エネルギーとファイナンスを学ぶのにも非常に優れた書物だと思った。


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