›6 11, 2008

太陽電池の成長と競争激化

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太陽電池業界が急成長している影で、日系太陽電池メーカーが不振である。
これは、欧州でドイツ、スペイン等で太陽光発電電力を火力発電よりも高い価格で売る事ができる制度(フィードインタリフ制度)による助成のため、日本の政策の遅れによる問題がある。

さらに、太陽電池製造においては製造装置を買えば誰でもつくれるターンキー(鍵を回すだけ)と呼ばれるほど設備産業となっており、企業の歴史の短い企業でも思い切った設備投資とSi(シリコン)調達により日本勢の売上を抜かしてしまっている。

例えば、ドイツのQ-Cells(99年創業)、インドMoser BaerPV(05年創業)、中国Suntech(01年創業)はいずれも創業から10年未満の企業である。

□太陽電池の種類

太陽電池の構造と製造工程は、半導体と類似している。

単結晶Si:変換効率が高いがコストと信頼性が問題
多結晶Si:変換効率が単結晶より若干落ちるが大量生産でき、主流
薄膜系:Si使用量を大幅に削減できるが、変換効率が悪い。
その他にも化合物系、有機ELなどの利用もあるが主流ではない。


□薄膜系太陽電池
Si基盤を使う結晶形と比べ、製造プロセスがシンプルで、ガラスなど安価な基板上にプラズマCVDで薄膜を蒸着させる成膜工程がキーであり、半導体製造装置、FPD製造装置の大手でもある米国Applied Materials、アルバックが一貫ラインを提供しており、この設備を入れればほとんど太陽電池ができてしまう代物らしい。半導体、液晶テレビ製造と過酷な競争にさらされてきた装置メーカーなので、製造装置は寡占ぎみで製造方法も定着している。

しかし、日本の太陽電池メーカーは総合電気メーカーの一事業で歴史が長く、またノウハウもあるため主要な製造工程が内製のようだ。

このようなことから世界的に太陽電池に参入するのには、その国の政策、Siの調達、設備投資の資本力の3つがキーになっている。

エヌ・ピー・シーは太陽電池で急成長した企業だが、セルの貼り合せ、ラミネート、検査と後工程を一貫して提供できる、これまたターンキー・モデルで急成長している。

これらの工程それぞれは、成膜工程のように寡占化されていないが、複数の機能を一貫して提供できる点が、導入企業に受け入れられているのだろう。何しろ、薄膜系は新規参入企業が多く、製造ノウハウが無いのだから。

こうしてみると、製造業もITの世界と似てきているのだと感じる。モジュール製造装置メーカーは寡占化され、それを導入すれば誰でも製造できる。携帯電話やデジカメも各モジュールを調達すればEMSで組み立てればできてしまう。
セットメーカーは、設備投資力、価格競争力での勝負である。マイクロソフトやオラクルやグーグルが資金力で同業やベンチャーを買収し成長し、市場を制覇するような点とも似通ってきている気がする。

何よりも、技術力が重要でなくなってきている点がIT業界と似ている。バグ(不具合)があっても販売日程が優先され、消費者も性能よりも価格、デザインを優先させ、長く使わない。

今までとは違う動きを感じる。

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