›12 10, 2007

日の丸半導体は死なず(寡占化される半導体市場)

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資本主義経済というのは、成長を前提に成り立っているものだが、成熟産業ではゼロサムゲームであり、熾烈なシェア争いになる。
あらゆる成熟産業は少数企業の寡占化に陥い衰退していくのだと思う。成熟産業は戦国時代のような過酷な領土の奪い合いにより、勝ち残ったものが市場を支配するという結果になるんだろう。

半導体産業というのは新しい産業であり、成長産業でもある。まだ30兆円程度の規模であるが寡占化になってしまっている。

特殊な構造であるのは、他の自動車産業などとは違い、製造装置メーカーが生産を支配する構造となっていることだ。半導体製造装置(EQ)メーカーは、かつては日本企業は存在さえしなかったのが、今では市場シェアのほとんどになっている。

他社の技術のコピーだったり、半導体メーカーとの癒着だったり、研究開発努力だったり色々あるだろうが、激しい国際競争を乗り越え、ここでも寡占化が進んでいった。特に前工程は特定の業者が特定の工程を抑える形で巨大化していった。ターンキーと呼ばれるように製造装置を入れることで生産ができるような設備産業なのが半導体業界だ。

そして、製造装置は競争を繰り返し、他社の追従を受けないレベルへと技術開発し、半導体メーカーの設備投資を促す新機能開発を繰り返したせいで、400mmシリコンウェハーレベルでは、設備投資できる体力のある企業の数も減ってしまった。

装置メーカーの努力が半導体メーカーの寡占化を進め、結果として衰退産業になっていくのではないだろうか。

太陽電池にしてもEQがターンキー化しているため、最近では金のある中国企業の台頭が目覚しい。

泉谷氏の「日の丸半導体は死なず」を読んで、本文にはもちろんそんなことは書かれていないがそう思った。そういう解釈をされると筆者は困るだろうが。

日の丸半導体は死なず―黄金の80年代の復活か?
日の丸半導体は死なず―黄金の80年代の復活か?泉谷 渉

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