この本は驚いた。これまで報道されていた事実だけを捉えていたが、現実はもっと深かった。そして堀江の証言が続く中、この本に書かれている事実と一致しているのが驚く。
堀江はこの本と本人の証言が事実ならば、無知であった。読んでみて、事実やはり堀江は無知であったと感じた。かといって経営トップとしてその責任は重大である。
本書によると、堀江は選挙活動、芸能活動に勤しみ、M&A案件については訳も分からず了承している。リスクの伴う貸し株に関しても了承しており、無知だったと考えられる。
その他方、ライブドアM&A案件には楽天の国重副社長が不正もしくは怪しい内容であることを記者にリークしている。敵対していた楽天から検察に流れたのであろうか。
宮内に関しては、朋友である中村(共にY高同級生)と共謀し、ライブドア自社株食いプランを練り、更に堀江の証言により宮内、中村が香港の銀行を使い横領しフェラーリ購入していた事実が明らかになっている。この横領に関して検察が抑えていなかったはずもなく、更に自社株食いなどのスキームで宮内、中村と共謀し、沖縄で謎の死を遂げた野口についても調査があやふやになっていることを考えると、検察は堀江逮捕のため司法取引であった疑いが強い。
今後の裁判の行方を見守りたいが、宮内の横領(本人は借りていただけと主張)も明らかになり、検察が国政捜査として市場を脱法的に利用していた堀江と村上を逮捕することを当初から目的としていた可能性が高い。
堀江、村上に積年の恨みを持つものは多い。フジテレビを初め、既得権益を持ち、政治家と深いパイプを持つ企業経営者、政治家を中心としたグループであり、彼らの力が働いていることを感じさせられる。
また、ライブドア、楽天のメディア買収も、単に株で儲けたかった村上の悪知恵であったことが明らかにされている。
村上のメディア向けの発言はあくまでも建前の正義感であり、実際は金に対する執着力の強すぎるグリーンメーラーであることが明らかになっている。
村上逮捕は宮内の検察での取調べから結びついているが、当たり前のようにインサイダー情報でこれまで村上が利益を上げていることが明らかになっている。TBSの株も結局楽天三木谷はだまされた形でつかまされている。
フジテレビを鹿内家から乗っ取り牛耳る日枝にしろ、堀江逮捕にかんでいたのかと感じさせられる。フジテレビはライブドアとの和解のさいデューデリジェンスを行いライブドアについて調べこんでいるのである。
この本を読み、成り上がる者、脱法的に既得権益を持つ勢力を脅かすものへの圧力の恐ろしさを感じた。また、最も恐ろしいのは権力を持つ検察であり、SAPIOで田原総一郎が連載しているリクルート事件でも明らかになっているが、強引かつ検察のシナリオどおりに能力のあるものが消されるという力に震え上がった。
もっとも一般市民は、既得権益の勢力を脅かすこともできないし、彼らのために金を使い、彼らはますます肥えているだけなのだが。
ヒルズ黙示録―検証・ライブドア | |
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