›7 27, 2006

合併会計(楽天は何故赤字だったか)

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企業結合会計基準というものがある。企業を買収する際、買収金額が純資産より大きいか小さいかで買収後の資産価値が変わってくるが、いずれにしても企業はメリットがあるから買収を行う。

業結合会計基準には2種類ある。

1. パーチェス法
パーチェス法は、買収先企業の資産・負債を時価で引き継ぐとともに、その取得原価を、対価として交付する現金および株式等の公正価値とする会計処理方法である。

被合併企業から受け入れる資産・負債は時価評価で行う。
取得原価と時価評価ベースの純資産額との差額は下記の処理を行う。
  取得原価 > 時価ベース純資産の場合: のれん代として資産計上
  取得原価 < 時価ベース純資産の場合: 逆のれん代として負債計上

2. 持分プーリング法
買収先企業を帳簿価額で引き継ぐ会計処理方法である。パーチェス法と異なり、日本独自の会計処理でありのれん代は生じない。

特別な条件を満たしていなければ持分プーリング法は適用できないが、どの会計処理を採用するかは、合併の経済的実態が大きく影響を及ぼす。

さて、楽天の問題。楽天もライブドアも成長戦略としてM&Aを活用してきた。ライブドアは主に時価が簿価を下回る(PBRの低い)企業を主に買収してきた。理由はいくつかあるが、企業の再建がうまい(実績がある)というのが上げられる。オン・ザ・エッヂ時代潰れたライブドアを買収したときも一人を残して見事に再生した。潰した旧ライブドア社長は何故かその後アップル社日本法人の社長になったのだが。旧ライブドア社も激安で買った。たぶん他の会社だったら再建できなかったろうが、みごとにライブドアという社名を活用した。
他の理由としては、安い会社だったらなんでも良かったとも言われている。事実問題だらけの企業も買収しているが、実際にはかなり買収には選別していたようだ。

で、楽天であるが、ライブドアと比較したときに買収がへたくそだとよく言われた。実際ずいぶんと高い買い方をしていてへたくそだとも思える。しかし、へたくそながら、うまいことしているのである。それが、のれん代の特別損失による一括償却という方法である。

そもそもこんな方法が許されたのは、買収に費やしたのれん代が買収後は活用できないから損金扱いするという考えが本来は前提にあるのだが、実際にはシナジーが発生しておりへたくそな買収でもメリットは生じている。
楽天は法律上そのような一括償却が認められなくなるため、のれん代の一括償却をやめたが、5年間で計800億円強を一括償却し特損計上してきた。16年にものれん償却費を「特別損失」として219億円計上

そのためキャッシュフロー上は変化が無いのに赤字になり法人税を払わないというメリットを享受してきた。これは国家にとっては減収であり、買収のコストを税を払わないことで補っていたということだ。合法であるが。しかしまあよくもここまでずうずうしく赤字にしてきたとは思ってしまうが

そう考えると、楽天とライブドアはまったく違った基準の元M&Aを実施していたと思える。堀江容疑者はかつて楽天のことを赤字の会社と馬鹿にしていたが、楽天よりすぐれた会社と見せる為あえて安い会社を買い、利益を上げ(逆のれん代のため特別利益となる)、さらには粉飾、自社株売却益の付け替えと犯罪まで犯した(容疑だが)のかと。
他方楽天は、営業利益をなんとかして合法的に税を払わず内部留保、成長へと回せないかと考えていたのかと。

そう考えるとライブドアのニッポン放送買収(激安でフジテレビまで買える)と楽天のTBS買収(何がやりたかったのかわからん)の取り組みの違いも見えてくるし、今後の楽天の成長戦略の限界も想定できるのではないか。


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