›7 18, 2006

臆病者のための株入門

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非常に有意義な内容だった。最も半分以上はMBAで習うファイナンスがベースなのだが、ど素人、これから株を始める人にとっては画期的な内容だと思う。

まず、テクニカル分析とファンダメンタル分析の熾烈な戦いについて書かれている。証券会社のセミナーや、ギャンブラー、売られている大多数の株に関する本がテクニカル分析なのだけれども、それは手数料で稼ぐ為という当たり前の話以上に、ほんの一握りの勝つ人と、大多数の負ける人に分かれるというのが再確認できた。宝くじみたいに半分近くサヤが抜かれるギャンブルを「馬鹿への第2の税」と呼んだり、「愛国者」とまで皮肉っているのには苦笑した。

ただ、著者の橘氏は、他の書籍からわかるようにリバータリアンの立場を取っており、株式市場にアクセスする全ての人を許容している。ニートのような者でさえ、株はギャンブルとしてはコストが低いので他のギャンブルをするよりもよほど社会にとって良いという立場を取っている。
それでも、働いたほうが良い(サラリーマンという自分が働くことの利益パフォーマンスが最も高い)と後ほど示唆していたが。

他の橘氏の本と根本の主張は一緒で、

「株式市場は効率に近く、多くの理論があるが、若干のゆがみがある」

というところだ。
効率に近い部分では、インデックスベースの投資信託で運用するのが最も賢い。アクティブファンドは、統計的にサル以下(ランダムに株に投資するより利回りが低い)ということも書いている。但し、この統計では期待値が乗っかっていない。ほんのわずかな一部のアクティブファンドはインデックスを遥かに上回るリターンを出している事実について書いていない。

結局統計を自分の主張に良いように使っていると思わせられる箇所がいくつかあった。

また、ケインズの「美人コンテスト」は習ったが再度思い出してくれた。コンテストでは自分が美人と思う人を投票するのではなく、皆が美人と思う人を自分も投票する。
株も一緒なのだと。考えてみると、そこが株式市場の現実との乖離に繋がっているのかと思う。

さらに、資産配分(アロケーション)はGDPの比率に合わせるべきという主張が画期的であった。多くの投資信託の本やFAは日本株をリターンの主軸と考えているのとは根本的に異なり、どこを選んでも同じだけど理論からすれば海外主流に分配したほうがリスクが分散する。

当たり前だけど、はっとした事実であった。

但し、株式市場や日本の税制には不合理な面が多数あることについても書いている。実はここの部分が興味があるのだが。かなり物足りなかった。ただ、ファイナンスを知らないで投資をする人は必須の知識が書かれている。
例えば、配当。配当は損だということはこのサイトでも何度も書いてきたことだが、配当は2重課税(税を払った後に配当を行い、さらに配当で税を抜かれる)と橘氏もはっきりと主張している。

橘氏はテクニカルをギャンブルとして楽しんできたようだが、結局真剣に金を稼ごうとしたら挫折していることがわかる。金融商品はあくまでも遊びと考え、金は執筆で稼ぐという結局リスク・リターンが最適な組み合わせに落ち着いているようだ。

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