›10 20, 2005

交渉の罠(交渉術シリーズ)

交渉の罠(Entrapment)とは、交渉によって何も得ることがなく、損ばかり
してしまうような現象(罠にかけられた)である。

交渉において、状況を良くしようとすればするほど悪化してしまう。

交渉学の授業においてよく出されるのがDollar Auction Gameというのもで
ある。
教授が、おもむろに財布から20ドル札を取り出し、この20ドル札をオー
クションにかける。一番値段が高かった者がこの20ドルを競り落とすことが
でき、次に値段が高かった者は、ルールとしてその額を教授に払わなければ
いけないというルールだ。

よく考えれば、誰も競り落とそうとはしないが、あまり考える時間を与えず
に教授がオークションをスタートしてしまう。

やってみればわかるのだが、これは2人だけが最後まで値段を吊り上げる
ゲームへと発展してしまう。
例えば、10ドルで競り落とそうとしても、もう片方が自分の入札額を払わ
ないといけないので、11ドルを次に入札せざる得ない。そうすると10ド
ルで競り落とそうとした者は12ドルで競り落とせざるを得ない。
結局20ドルというこのお札の額を遥かにオーバーした額になっても、競り
落とし合いは続く。

このようにお互い損をするとわかっているのに、続けざるを得ないのが、
交渉の罠の恐ろしいところである。

この例で明らかなのは、20ドルをオーバーしても競り合いを続けるという
本来の目的から逸脱した交渉に進んでしまっていることだ。


□ 具体例

実はこのような状況は日々の生活においても多々ある。
1)株価
下がりまくっていて、買わないと損と思っていつまでも買ってしまう。
2)戦争
一度始めると、勝利するまでやめれない。負けると失うものが多いから。
でも戦争においては勝者であっても、代償は大きいのだが。
3)高額商品
車や家を買うときは、かなり調べまくるし、販売会社との交渉にも時間を
かけるものである。後に引けなくなってしまう。

□ 交渉の罠の原因

交渉の罠におちってしまうのには原因がある。
1)心理的要因
何故か続けないといけないと思ってしまう。視野が狭くなってしまう。
2)楽観的希望
何故か、最後は自分が勝つと思ってしまうから。
3)手ぶらでは帰りたくない
結局ゼロサムゲームなので、交渉をやめると何も得られないどころか、損を
してしまうことに対するあまりの恐怖

□ 対策
1)目的を明確にすろ。
交渉の目的がそれていないか。
2)具体的数値でボーダーラインを決めろ。
最初に決めておいて、それ以上だったらお金を出さないようにすることだ。
3)楽観的希望を捨てよ。
4)時間の流れに実をかませるな


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