›6 03, 2005

交渉術-その5「ハーバード流交渉術」

今回も交渉術をやります。読者の皆さんもこの交渉術を使う機会が着々と出
て来ていることと思います。
しかし、交渉がまったく役に立たないような状況もあります。
よく言う、「出来レース」というヤツです。
既にガッチリと裏でスキームが組まれていたり、政治力で決っていたり、
バーター(交換条件)だったり、談合済みだったりと色々です。

最近では、非常に調子の良いベンチャー企業の方とお話をする機会があった
のですが、そのベンチャーの資本は、有名マスコミ企業(テレビ、広告、パ
チンコ系)がしっかりと出資しており、役員も派遣で天下っていました。
だから営業しなくても仕事は、それらの仕事からどんどんくるそうです。

こんな不景気なのに、営業マンがいないのです。

こういった企業とコンペになったときは、交渉ではどうにもならないでしょ
う。形だけのコンペで、出来レースなのですから。
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▼ 交渉術-その5「ハーバード流交渉術」 ▼━━━━━━━━━━━━━
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これまで交渉の根本的な方法論、伝統的な交渉術について見てきたが、ここ
からはより効率的な交渉術、科学的な交渉方法について述べたいと思う。

今回は「ハーバード流交渉術」だ。

~流交渉術と名のつくものは色々あると思う。ユダヤ式とかもあるかと思う。
だが、交渉術で一番名の知られた方法論は、やはりハーバード流ではないだ
ろうか。

実はこのハーバード流は、日本語で勝手にハーバード流と言っているだけで、
本場のアメリカではこうは言わない。恐らく、日本に紹介されるときに、
出版社とかが売れる名前を必死で考えてハーバード流と名づけ、それがその
まま定着したのであろう。

●「ハーバード流交渉術」

ウィリアム ユーリー (著)

ハーバード流交渉術は、アメリカでは「Negotiating to Yes」という。
確かにこの名前では、訳でも本のタイトルや、研修のタイトルにしたらイン
パクトが薄い。

□ ハーバード流の目的

余談が長くなってしまったが、ハーバード流交渉術は非常に合理的なロジッ
クの交渉術である。交渉相手を打ち負かす交渉でなく、交渉相手を納得させ、
交渉が終わった後、両社満足する結果を得ることを最大の目標としている。
そこが、そもそも伝統的な、勝ち負け勝負の交渉術とは抜本的に異なる。
相手に屈服感、敗北感を与えないで、自分の利益を獲得し、目的を実現する
ための方法論で、ビジネスの世界、政治、外交の場で非常に有効な方法論で
ある。

アメリカでは、かなりメジャーな交渉術で、大企業の研修、軍事、外交、政
治とあらゆる場で、この交渉術のセミナーが実施され、また実際に活用され
ている。

そこが、アメリカがあらゆる点で交渉上手と言われる所以なのかもしれない。
いや、もしかしたら、だから交渉術の認知度が高くて、講習・セミナーをこ
ぞって受講するのかもしれないが。

□ウィリアム ユーリー氏
「ハーバード流交渉術」の執筆者であり、彼が理論を体系化させた。
現在も世界中で講演や研修を行っていることであろう。
ウィリアム ユーリー氏を米国の研修ビデオで見たのだが、パッと見は交渉の
達人という雰囲気では無かった。ベーブ・スペクターのような雰囲気なのだ
が、話し出すとさすがに話し上手で只者では無い、という印象を受けた。

□ ハーバード流交渉術のメソッド
今回は簡単に紹介したい。
まず、交渉においては、自分の立場、相手の立場があり、そして共通の問題
というものが存在する。これが根本である。
伝統的な交渉術においては、この利害というものを奪い合う為の方法論とし
ての交渉であった。
だが、ハーバード流交渉術では、この考えかたが抜本的に違った。
ユーリー氏によると、共通の問題というものは、実はもっと大きな利害だと
かを含んだものであり、氷山の一角なのだそうだ。これは彼の説明を受ける
と納得するのだが、お互いに自分の立場ばかりに固執することによって、見
えなくなってしまうのだ。

ユーリー氏は簡単な例を豊富に紹介するのだが、次のような騒ぎがあったと
いう。
ある図書館で、一人の事務員が窓を開けようとした。ところが、別の事務員
は開けるなと言い、そして言い争いになってしまった。
お互いの問題は「窓」であり、自分の立場を主張するあまり激突してしまっ
たのだ。
ところが、それを聞いていた別の人が調停に入ることになった。
その人が、それぞれの意見を聞いてみたところ、窓を開けろと主張したもの
は、空気が悪く、空気を入れ替えたいので開けたいと主張していた。
窓を閉めろと主張したものは、書類を扱っており、窓を開けると風で飛んで
しまうので、閉めろと主張していた。
そこで、その人は双方の利害を満たす提案として、隣の使っていない部屋の
窓を開けることを提案した。そして、その提案は双方に受け入れられた。

あまりにも馬鹿馬鹿しい簡単な例であるが、交渉というものは自分の立場、
主張ばかりに固執してしまって、激突して姉妹勝ちなのだ。だが、ハーバー
ド流交渉術では、その背後に着目することによって、双方に有益な選択肢を
お互いに出し合い、お互いに納得の出来るように解決させることが根本的な
ロジックである。

とまあ、書くのは簡単ではあるが、実際にはかなりのケーススタディや、実
践をこなさないと身に付かないものである。
交渉術に関しては、次回もまた紹介していくが、様々な会社で研修を行って
いるので、受けてみるべきだ。できれば欧米の交渉術が良いだろう。
では、また。


ハーバード流交渉術
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大企業は、未だに談合だとか卑怯なことを沢山している。

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