›5 30, 2005

チェ・ゲバラ伝(経営戦略.jp)

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「あなたは今幸せですか?」
こんな風に駅前で話しかけられたことがある。キリスト系の宗教だった。

気持ち悪かったのを覚えている。

今、日本は若者は本当に幸せそうな顔で毎日を謳歌している。だが、ただ毎
日を快適に過せるという喜びだけで、そこに希望や使命感といったものを感
じとることができない。

あのときの宗教団体から貰った本には、「やがてこの地球上には選ばれた人
だけが、病気、老い、恐怖といったものから克服され、永遠に平和に暮して
いける世界がやってきます。(キリストが復活するそうだ)」
というアホらしいことが書いてあった。

誰がそんな気持ち悪い世界で生活したいかとそのとき思ったが、今の日本の
若者にとっては変りのない世界の気がしてならない。

一方サラリーマン世代、高齢者にとっても何の希望があるというだろうか?
若者以上に少ないかもしれない。
成長期の終った日本において、新しい仕事、やりがいのある仕事、使命感の
ある仕事を見つけることは頗る困難。

今回は、めるまがの趣旨とは少し違いますが、昔、清らかで献身的な志の為
に自ら命を捧げた男たちの真実のロマンを紹介します。

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▼ フィデルとエルネスト ▼━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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これを読んでいる大半がサラリーマンで男性だろう。
サラリーマン男性にとって、自分の人生を見直す機会がいくつかある。
就職、転職、結婚、昇進等、その度に人生に対する漠然とした不安、空しさ
といったものがあるのではないか。

最近「プレジデント」誌では、サラリーマンの不安払拭や、ストレスを扱う
記事が多い。そして、そういった記事を読むたびに、自分がストレスや不安
に陥っているのだと自覚させられてますます落ち込むことはないか。

仕事に打ち込むことで、ネガティブな思考から開放されるかもしれない。
だが、仕事自身がまったくの空しさしか伴わないのであったなら。

ビジネスマンにとって、21世紀のビジネスの問題は仕事に対する使命感に
あるのではないだろうか。明治、大正においても、戦後復興においても、そ
こには仕事そのものに対する使命感と、誰も成し遂げたことのない領域に対す
る喜びがあった。

だが、今や多くのビジネスがルーティン化し、社会貢献どころではなく企業
は赤字にもかかわらず従業員は給料を泥棒のように貰っている状態だ。
つまり、ビジネスが社会貢献することが難しくなってきている。

このような社会の中で、生き方に希望を見出すことは難しい。だが、男なら
誰もが若きころ夢見たロマンや冒険をまた思い出してみるのはどうか。

今回紹介するのは、男なら誰もが憧れる生き方を実践した男たちの感動的な、
革命のエピソードを紹介しよう。

□ フィデルとエルネスト

1950年代、中南米では前世紀においてもっとも熱い男たちのロマンが繰り広げ
られていた。

1953年、ハバナ大学法学部を卒業したばかりのフィデルは、拷問・独裁で悪名
高いバティスツータ政権を打倒するためモンテカルダ兵営を襲撃したが、失敗
し監獄に送られてしまった。だが、運良く55年に恩赦で釈放され、フロリダか
らメキシコに送られ亡命した。
この時の法廷で、フィデルはキューバ革命の精神と行動原理について熱弁をふ
るい「歴史は私に無罪を宣告するだろう」と叫んだのはあまりにも有名である。

メキシコ・シティのインペリアル・アパートで、フィデルは仲間とキューバ侵
攻の作戦を練り、「来年はキューバに侵攻する。あとはキューバを開放するか
死ぬかだ」と宣言した。

他方、エルネストはアルゼンチンで産まれ、学生時代から放浪と文学を愛し、
最初は考古学に興味をもち、オートバイで南米大陸旅行に出かけたりもした。

彼の放浪旅において虐げられる人々との出会い、ハンセン病患者との出会い、
そしてグアテマラでの米国による侵攻を目の当りにして米帝国主義の実態を知
り、米国の植民地主義との闘争による現地民衆の解放を決意する。

メキシコ・シティにおいてフィデルとエルネストは運命的に出会い、革命に向
って突き進むこととなる。

エルネストの著「革命の回想」の中で、「最初フィデルに会ったとき、勝利は
おぼつかないように思えた。しかし私は共感と冒険というロマンチックな絆に
よって、またこれほど高邁な理想のためなら、他国で親でも死にがいのあると
いう考えから彼と結びついた」ということを言っている。

こうしてフィデルとエルネストのコンビは革命の同士を募り、56年、8人乗り
のオンボロ船「グランマ号」に82人も乗り込み、メキシコからキューバ東部
のサンティアゴ・デ・クーバの海岸に向った。ところが座礁してしまい、しか
たなしに必要最低限に食料、武器を持ちなんとか上陸したところ、待ち構えて
いたバティスタ軍の奇襲を受け、潰滅状態となってしまう。
フィデルとエルネストは何とか生き残ったが、同士は12名という状態になっ
ていた。

フィデルはこの12人をもってゲリラ部隊を結成「我々はすでに戦いに勝った」
と宣言した。

こうしてゲリラ活動を重ね、徐々に民衆を見方に引きいれ、59年ついにバティ
スタ政権を倒し、奇跡的にキューバ革命を達成したのだ。

革命達成後、エルネストはキューバの大臣に就任し、献身的にキューバ発展の
ために捧げる。

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□ 男のロマン

エルネストはキューバ革命後、工業大臣として国のために尽したが、やがて別
の目的を見いだすこととなる。
そして、65年フィデルに「決別の手紙」を書いてキューバを去り、またして
も世界の戦場へ旅立ち、ゲリラ戦を展開することとなる。

このときエルネストの部下達は既にキューバの大臣や軍の上層等重要な地位に
あったが、エルネストが次の戦場に旅立つ時に声をかけられた者は、なんと、
全員エルネストについていったのだ。

エルネストがフィデルに宛てた「決別の手紙」には次のようなことが書かれて
いた。

「・・・僕は君に躊躇なく従い、君の考えを身につけ、僕らが置かれていた危
険や原則を理解し、評価してくれたことを誇りにしている。
いま世界のほかの国が、僕のささやかな力添えを望んでいる。君はキューバの
責任者だからできないが、僕にはそれが出来る。別れのときがきてしまったの
だ。
喜びと悲しみの入り混じった気持ちで、こんなことをするのだ、と察して欲し
い。僕はこの地に、建設者としての希望の最も純粋なもの、そして僕が最も愛
している人々を残していく。
それは僕をとても悲しい気持にするのだが、僕は新しい戦場に、君が教えてく
れた信念、わが国民の革命精神、最も神聖な義務を遂行するという気持ちを携
えて行こう。
帝国主義のあるところならどこでも戦うために、だ。
それが、僕を慰め、深い心の傷を癒してくれる。・・・・」

こうしてキューバを去ったエルネストは、コンゴ、ボリビアでゲリラ戦を展開
し、1967年、エルネストは39歳の時、ボリビア政府軍に暗殺される。

「ラテンアメリカに人口を構成するほぼ3億人の人間、その大多数は絶望的に
貧しく、そして20年以内に6億人になるだろうし、彼らは物質的な生活や文
化や文明に権利を持つのである。が、彼らに対して真の希望を与えるような正
しい答え、あるいは必然的な行動をなしたのはエルネストのほかに誰一人とし
ていないのである。・・・
何故なら大陸を救うという高貴な理想に導かれた一握りの人が行ったこの行為
は、意志の力、英雄的な精神、そして人間の偉大さが何を成しうるかの崇高な
証として永遠に残るだろうからである」

フィデルはエルネスト死亡の翌年このように語った。

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ゲバラ日記 モーターサイクル・ダイアリーズ チェ・ゲバラ―フォト・バイオグラフィ ゲリラ戦争―キューバ革命軍の戦略・戦術 チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記


*チェ・ゲバラ Guevara Lynch, Ernesto Che
1928年~67年 キューバの革命家、冒険家、医師、ゲリラ。
アルゼンチンのロサリオ市に生まれ。1947年ブエノスアイレス医科大に入学。
在学中(51年~52年)チリ・ペルー・エクアドル等南米大陸をバイク旅行。
53年医学博士。J.D.ペロンの独裁を逃れて南米諸国を渡り歩き、グアテマラ
革命の失敗をまのあたりに見る。54年メキシコに渡り、翌年カストロらと出
会う。
56年カストロと共にグランマ号でキューバに渡り、第2部隊の指揮官としてゲ
リラ戦を指導、革命勝利に大きな力を与えた。59年キューバ国立銀行総裁、
61年工業相、62年キューバ統一革命組織幹部会メンバーなどを歴任し、外交
活動でも重要な役割を果たす。65年キューバを去り、67年ボリビアでゲリラ
活動中政府軍に射殺。

著「ゲリラ戦」「革命戦争の旅」「ゲバラ日記」
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「あの頃世界で一番かっこいいのがゲバラだった」by ジョン・レノン

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