›5 29, 2005

アマゾン・ドットコムの分析(4)

Category: 経営戦略 / 0 Comments: Post / View

今回でアマゾンについての分析記事をひとまず終ります。
このような記事を1ヶ月間程度書いている間にも、アマゾン・ドットコムは
どんどんと変っていきました。
日本のアマゾン(www.amazon.co.jp)さえも新サービスを出しましたね。

この「ユーズドストア」は果して成功するのでしょうか?
ニーズはあるのでしょうか?単に米国アマゾン・ドットコムのフランチャイ
ズに過ぎないのでしょうか?

ところで、日本のアマゾンでは「年賀状ストア」というのがあります。
インターネット時代ですが、年賀状はやっぱり葉書でつくって、手書きで
一人ひとりにコメントを書いて出さないといけませんからね。

筆者も今、必死こいて年賀状を作成しています。今年から「筆ぐるめ」
というソフトを使うことにしました。アマゾンでは他にも「筆まめ」や
「筆王」もありましたが、価格の真中の「筆ぐるめ」にしました。
(日本人はみんなこうやって中間を選ぶんだよなぁ)
写真を貼り付けられるし、文章を毛筆フォントで書いたり、オリジナリティ
あふれる年賀状ができそうです。


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▼ アマゾン・ドットコムの分析(4) ▼━━━━━━━━━━━━━━━
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新産業への変貌

(11)組織
ジェフ・ベゾスは常にマイクロソフト社の組織をイメージしていた。
マイクロソフト社の組織は競争社会で、社員一人一人が非常に戦闘的なモチ
ベーションで成果主義で仕事をしている。

ジェフ・ベゾスはそこまで戦闘的ではないものの、社員が燃焼しきるほどの
モチベーションと和やかさ両社を併せ持った組織を目指したようだ。

実際にはアマゾン・ドットコムの誰もが業務過多だったが、エキサイティン
グであったと答えているようだ。

そして、ジェフ・ベゾスは多数の平凡な社員を雇う代わりに、その分野の
トップクラスの人材を雇うことに集中した。初期の段階では、全てジェフ・
ベゾス自ら面接を行って人材採用を行った。

つい今月(2002年11月)においても、科学者でアルゴリズムの第一人者を
獲得したと報じられた。
http://news.com.com/2100-1017-965068.html

(12) 顧客満足度(Earth's most customer-centric company)
アマゾン・ドットコムのサイトにアクセスすると次の文字が飛び込んでく
る。

 Earth's most customer-centric company

この表現はアマゾンが単なるオンライン書店という業態ではなく、顧客
満足を最も考えていて、実現できるシステムを持っていることを表現し
ている。

アマゾン・ドットコムがサイトをオープンした直後は、システム、業務
フローに会わない顧客の要望が多々あった。その際に、ジェフ・ベゾス
は決まって「顧客は常に正しい」と言い、無理なシステムの再設計や
業務フローの見直しを行ったという。
これは現場ではかなりの不満があったそうだが、結果としてどのような
顧客の不満や無理にも応えられるシステムが構築されていった。

単なるインターネット経由でのサービスでは、できない顧客サービス
も当初から実施されていた。客からの電話を受けるコールセンターを
設置し、コールセンター内のサポートデスクの従業員にはアマゾンの
システムの理解からバックエンド業務まで幅広い業務内容の習得を
行い、高学歴の人材を積極的に採用したという。

筆者も何度かコールセンターに電話したが、非常に丁寧に回答を戴い
た。住所の変更・クレジットの変更について電話でブラウザを操作し
ながら教えてくれたため、すんなりと問題が解決できた。


さらに、コールセンターでは本を探すのを手伝うサービスを実施し
ていった。さすがにコールセンター内ではさばききれないほどの業務
負荷となっていったが、顧客に回答する数が多いとインセンティブを
与えるというようなエサを用意し、非常に質の高いサポートデスク
を形成することができた。但し、ジェフ・ベゾス顧客がサポートデス
クに頼る習慣がつくことを苦慮している。
http://www.business2.com/articles/mag/print/0,1643,14832,FF.html
(Is there anything you won't do for your customers?の回答)

webでシステムを使ってみると、顧客ひとりひとりに対するページが
あり、自分の過去の購入履歴から興味のある本を紹介してくれる
サービスもあり、これはITを利用して初めて実現できるのだが、
非常に便利である。

このようにアマゾンはデータベースの蓄積を元に、毎日進歩しており
顧客サービスも向上できるスケールメリットを持っている。

(13)新産業への変貌
アマゾン・ドットコムはオンライン本屋からすぐに脱却した。
インターネットでモノを売ることは、実は簡単ですぐに真似される。
バーンズ&ノーブル(http://www.barnesandnoble.com)の初期の
ウェブ・ページはアマゾンそっくりであった。
この模倣化に対応するには、ワンクリックというビジネスモデル特許
しかなかった。この点については前回書いた。
このような基本的なアイデアを特許で守りつつも、パイを広げるため
には物流業者になる必要があったのだ。

アマゾンが倉庫を持ち、物流業務をやるようになり、ウォールマー
ト社員をヘッドハンティングにより獲得した。
ウォールマートは、世界最大の小売業であり、価格競争のディスカ
ウントストア業界で、データマートによる洗練された商品の仕入れ、
物流の効率化で競合を突き放した。また物流を意味するロジスティッ
クは元々軍事用語(ビジネスシーンの多くが軍事戦略を応用したもの
であるが)であり、ウォールマートも米軍のロジスティック専門家を
獲得しており、結局アマゾン・ドットコムも軍事戦略を応用すること
となったといえる。

ヘッドハンティングした社員は、

 リチャード・ダンゼル(元ウォールマートシステム部門担当副社長)
 ジミー・ライト副社長兼物流担当役員

であり、どちらもウォールマートの最大の強み(物流、データマート)
を築き上げた人物だ。これはすぐにウォールマートと裁判沙汰と
なった。

オンライン物流業者として、在庫回転率が非常によく、当時はどこ
でも新時代の物流と騒がれ、また同時にウォールマートのような物流
専門小売がインターネットに進出したら市場を奪われるかもしれない
という危険性もあった。
http://money.cnn.com/2002/01/22/techinvestor/lashinsky/
Amazon, you're no Wal-Mart

この時点で、アマゾン・ドットコムはオンライン本屋から逸脱し
オンライン物流業者に変貌を遂げた。
本の物流からその他の商材に拡張させるのには、M&A手法を使った。
すなわち、既にある分野の商材をインターネット上で販売していて、
その分野での顧客を持っている企業(必ずしも成功していない)を
買収、資本参加といった手法でアマゾン・ドットコムに取り込んで
いった。

Geoworks Corporation 1999年2月 書籍、CDなどのオンライン販売
accept.com 1999年4月 EC関連 (詳細不明)
Alexa Internet 1999年4月 ウェブナビゲーションツール
LiveBid.com 1999年4月 オンラインオークション
Exchange.com. 1999年4月 希少本・音楽関連グッズ販売
HomeGrocer.com 食料宅配サービス
Gear.com 1999年7月 スポーツ分野の在庫販売
Junglee Corp. 1998年8月 横断比較機能
PlanetAll 1998年 オンライン名簿
Drugstore.com 健康、美容用品販売
Pets.com ペット用品
(99年度前期1,2qだけでこれほどのM&Aを繰り広げた)

株価の高さを利用し株式交換制度で、多くの企業を取り込んでいっ
たが、多くのアナリストが、アマゾンの多角化は失敗の可能性が高
いと主張していた。だが、じぇふ・ベゾスの視点はアナリストのそれ
を遥かに凌駕していた。
http://www.redherring.com/mag/issue83/mag-bezos-83.html

アマゾン・ドットコムはM&Aで顧客リストを手に入れることが
でき、市場、販売網、顧客を一気に獲得していった。

また、アマゾンの優れた情報システムは顧客の購買履歴から商品嗜好
を分析することができる。これはどんな小売業も欲しいものだが、
オンラインショップのような情報収集力は無い。
何故ならば、インターネットではどの商品を選んだか、どの商品を
どれだけの時間を見たか、どんな商品を検索したか、購買金額、
購買頻度、同時購入商品といった、きめ細かい情報が収集できる
のだ。

アマゾン・ドットコムにアクセスするといつでも、その時の気分で
自分にどんな商品があっているのか教えてくれる。
まったく意識になかったけど、アマゾンに薦められたら欲しいと
思ってしまう商品もある。また、アマゾンに薦められたら間違いなく
買って損しないしないという安心感がある。
このような機能はリコメンデーション機能と呼ばれるが、アマゾン
より優れたリコメンデーションを見たことがないし、これからも
それほどまでに、顧客のことを知りえる企業はあり得ないだろう。
(体験したことのない人は、すぐに体験してみるべきだ)

このような顧客や商品の嗜好情報(情報を分析したもの)として
アマゾンが情報を例えばメーカーに提供するといったこともできる。

アマゾン・ドットコムは物流を制覇した後は情報で制覇すると思わ
れる。

(最後に)
 ヘンリーフォード   (フォードモータース)23年
 ビル・ゲイツ     (マイクロソフト)  12年
 ジェフ・ベゾス    (アマゾンドットコム) 3年
 
これらの数字は何かわかるだろうか。
(回答はメルマガのお尻にあります)

アマゾン・ドット・コムの光と影―潜入ルポ
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