›9 24, 2013

消費税増税と法人税減税 「富裕層減税、低所得者増税の意味」

Category: 政治経済(Political Economy) / 0 Comments: Post / View

消費税増税に伴い、法人税減税が検討されている。一見すると共産党などの主張のように弱者から奪い、強者を優遇する政策に見える。
消費税には逆進性があり、低所得者ほど税負担が大きい。ましてや法人税減税というのは消費者には直接恩恵が無いのだ。
法人税を減税した分だけ、労働者に分配されるということは無い。

何故、このような政策になるのか。

世界がグローバル化し、金融資本の移動が容易になったため世界中の国々が「租税競争」を行っているからだ。

金融センターや投資家は税率の低いシンガポールやタックスヘイブンに容易に移動する。固定資本が少ないIT企業も国境は関係ない。
製造業も、国内での「6重苦」 から海外に工場を移管し、利益は現地での再投資に利用する。
富裕層も資産が株や不動産などの金融資産があるが、流動性があるこれらの資産を税金の無いタックスヘイブンで一元管理される。
このようにして、法人税減税により企業や金融資産の誘致を世界中の国々が実施しているのだ。

他方で、税金から逃れられない人々もいる。
いわゆる労働者である中低所得者層、中小企業だ。労働資本というのは国をまたがった移動が難しい。外国語が話せなければ、海外での仕事を得ることは困難だし、労働ビザを取得するためのハードルも高い。国の徴税は取りやすいところを重点的に行う。
このため税は逆進性がますます強くなる傾向にある。

国内法人税がアメリカに次いで高いため(アメリカも減税予定だ!)、大企業は海外に法人を移したり、海外に生産工場を移す。こうなると労働者は職を失い失業手当や社会保障が甚大となってしまう。もちろん税収は大きく下がってしまう。グローバル化した世界では避けられない租税競争なのだ。

電子書籍は海外にサーバを置いている事業者にも課税をする予定とのことだ。アマゾンと国内事業者の競争は消費税負担から見ても大きなハンデがある。
しかし、このような徴税が可能なのであろうか。アマゾンであれば、国内のアマゾンから買わず、Amazon.comから買うことで課税が回避される。本では国内出版社の販売が影響するのでそんなに簡単にいかないかもしれないが、他の電子コンテンツである音楽、映画など当たり前のように海外法人、海外サーバから買うようになってしまうだろう。現に、電子コンテンツで巨大な市場であるアダルトコンテンツ(ようはポルノ)は、海外サーバ、海外法人からの配信が当たり前(これは日本国内ではモザイクをつけないといけないため)で、日本人がターゲットの市場であるにもかかわらず、巨額のマネーが海外に流出してることとなる。
同様のことがオンラインカジノでも言える。

スターバックス、Google、マイクロソフト、Appleと税負担を軽くする方法を次々と編み出している。(「ダブルアイリッシュ&ダッチサンドイッチ」参照)

このようにして金持ちはますます金持ちになり、貧しい者はますます貧しくなる。それが資本主義の本質では無いだろうか。
チャーチルは言った。「民主主義は最悪の制度だ。但し、他のどの制度よりもマシだが」と。
資本主義にも同じことが言えるのだろう。

日本がグローバル化した資本主義の中で生き残るには、小さい政府の実現と自己責任の徹底しか無いように思える。
小さい政府は、役所の仕事を民営化し、公務員を民間と同じ解雇のできる制度にすることだ。警察、教育、福祉などあらゆる公的サービスが民営化できる。
また自己責任の徹底は、雇用保険、健康保険、年金の廃止だ。
もちろん日本国民はこのような政治決断はできないだろうが。

ちなみに、労働者や低所得者に優しい国にも移民が殺到するので、入国のハードルを上げることとなる。他方、富裕層には永住権や国籍を与えてまで誘致しているというのが世界の流れだ。

Comments