›3 25, 2013

アベノミクス検証

Category: 政治経済(Political Economy) / 0 Comments: Post / View

自民党安倍総理になってから日本経済が円安・株高によって好転している。更には、土地などどの資産価値の上昇や大企業の賃金アップまで行われ、政権が変わっただけで、実質的な政策実行に至っていないにもかかわらず大きな変動を実感している。

アベノミクスは3本の矢と呼ばれる政策がある。

1.大胆な金融政策
2.機動的な財政出動
3.民間投資を喚起する成長戦略

骨子は「大胆な金融政策」である。
白川総裁の日銀の金融政策を酷評し、後任人事として黒田総裁、岩田副総裁が決定した。

黒田総裁のいう長期国債の購入と岩田副総裁のいう準備預金の積み増しにより、名目2%のインフレターゲットという金融政策を実行していくととなる。

2%のインフレ目標が実現できるかについては、多くの経済学者が疑問を呈している。このようなインフレが実現するには、ドル為替レートで100円では済まない大幅な円安が必要とされるが、消費者への悪影響のみならず、企業の購入品の価格上昇、国債暴落という財政破綻の恐れも懸念されている。
マネタリーベースの大規模な増加は、インフレ予想として資産インフレや投機が活発になるという現象に現れる。現に、株高、土地高といった現象が現れているが、輸出企業の為替による業績向上はあるものの、肝心な需給ギャップを埋める需要の増加まではつながっていないであろう。

最悪のシナリオとしては、需要が喚起されず、デフレ下での資産インフレ、資産バブルといった経済学上も歴史上もありえない未知の領域に突入するのではないだろうか。
既に資産を持つ富裕層はアベノミクスで資産価値が大きく上昇しているので、これが需要を喚起するのか、一般庶民や中小企業にも波及効果(トリクルダウン効果)があるのか注目している。

今後、日銀が積極的に量的緩和を実行することで更なる円安、株高になる可能性がある。どの株価があがるかわからないので、このような時は日経平均先物オプションやETFでインデックス投資をし、外貨を買うという戦略になる。

機動的な財政出動」に関しては、B/C(費用対効果:Benefit/Cost)が無い乗数効果の著しく低いものとなるだろう。これは税金を使った特定の企業や団体への利益誘導だ。既に成熟した日本において田舎に新たな道路や施設は必要なく、集約した都会にこそ公共投資を行うべきものだ。
財政出動に費やしたツケは将来に回されることなり、看過できない。

民間投資を喚起する成長戦略」は、小泉政権のときの竹中氏の行ってきたことの延長であり、新自由主義的な効率化の実現だろう。TPPに対する議論を見ても、特定の企業、業界の利益を優先に考えている点が理解できない。
貿易の自由化は農業など特定の業界に対する悪影響はあるものの、多くの消費者にとって薄く、広い有益な効果があるのだ。米ひとつとっても日本人は世界の5倍の価格の米を買わなければいけないという制約の中で消費生活を送っている。消費者に対する視点が無いのは何故だろう。

首相官邸主導で経済政策を実行する日本経済再生本部の「産業競争力会議」メンバーに、竹中平蔵氏が選出されている。徹底した規制緩和と合理化、小さな政府の実現こそ日本が成長するのに必要なことだ。通産省の行う特定の市場や業界を成長させようというターゲット戦略は失敗する。かつても官民ファンドなどで産業の再構築を目指したが、特定の企業や既得権益者の利益誘導となってしまう。

金融政策によるインフレで懸念されているのが、賃金上昇の伴わない物価上昇だ。安倍総理は産業界に賃金アップを要請している。

まず、産業競争力会議のメンバーである新浪社長が安倍首相に賛同し、ローソンが年収を3%引き上げした。
また、輸出産業の自動車はアベノミクスの恩恵を受ける代表的な業界であり、春闘で、労組の要求に対して満額回答が相次いだ。これもTPPや円安誘導という政府の政策に対するバーターのようなものだと考えられる。90%以上の中小企業においては賃金上昇を考えられるだけの状況には無い。しかも消費需要の伴わない賃金上昇においては、生産力の向上が行われないため、労働力の調整のためしわ寄せは非正規社員やパートタイム従事者や新卒就職者現象にくる。

アベノミクスは富裕層、輸出業者、TPP受益者、大企業労働者といった特定の団体に大きな好影響をもたらしている。

産業競争力会議のメンバーの出身企業は下記のとおりである。
サキコーポレーション、東レ、コマツ、みずほ、ローソン、武田薬品、楽天、住友商事

この中で中小企業のメンバーはサキコーポレーションの秋山咲恵氏のみである。サキコーポレーションはリーマンショック後から売上が半減し、巨額の赤字から同社の看板でもあった高層ビル最上階工場を大田区の町工場地域に移している。未だに景気は落ち込んでいるというか日本競争力を失ってしまったプリント基板の外観検査装置の会社なのだ。そもそもこのような政府の会議に出ている場合だろうか。

アベノミクスは今のところ経済の特定の箇所から確実に効果を挙げている。本格的な金融政策と財政出動を行えば、悪影響が出るまでの一定の期間は大きな効果を得られるだろう。その際、懸念されるのは増税だ。消費税増税後の恐慌という結果が出たら目も当てられない。

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