›11 05, 2012

サムスン栄えて幸福になる韓国経済

Category: 政治経済(Political Economy) / 0 Comments: Post / View

もちろんこのタイトルは三橋貴明氏の著書「サムスン栄えて不幸になる韓国経済」のアンチテーゼだ。
この本の内容は薄っぺらく、三橋氏の主張は結局まえがきにある数行に集約されている。韓国はサムソンなど大財閥優遇政策を取っている。サムソンは儲かるが、サムソンは雇用にたいした寄与はしていないし、国内設備投資にも大した貢献をしていない。企業収益は半数近くの外国人に配当で海外に流れていしまう。韓国の企業は寡占されていて企業収益が向上するのは国内消費者が被害を蒙りとトレードオフだ。その逆に日本の電機業界は過当競争で保護されていないため、消費者が得をしていると。

この理論は大きく間違っている。サムスン、LG、現代自動車に韓国経済も国民生活も支えられているのだ。

そもそも、「サムスン栄えて不幸になる韓国経済」では、サムスンの経営分析もしていなければ、韓国経済も対して分析もしていない。構造改革も小さい政府も公務員給与削減もTPPもインフレ対策、公共事業は必要でデフレ対策などという出鱈目でいい加減な理論が展開されている。

確かに韓国経済は、サムスン・LG・現代自動車・ポスコなど輸出企業に極端に依存している。その結果として、財閥系企業と中小企業の格差はある。
それでも日本における過剰な企業数による国内での過当競争よりはましである。

日本は電機業界も自動車業界も企業数は多すぎる。より集約して効率と生産性を向上しなければグローバル競争では勝てない。
韓国は国内市場が人口が少ないことから市場規模が小さく、最初から海外を意識した経営戦略を取っている。そしてグローバル競争で日本の電機メーカに打ち勝ったのだ。
やがて現代自動車もホンダを抜かしただけでなく、10年後にはトヨタを抜いているかもしれない。
電機業界は、世界最大市場であった米国で米国企業が勝手に撤退と倒産を繰り返してくれたおかげで輸出だけで米国市場制覇ができた成功体験がある。逆にいえばその時がピークで、世界をひっぱるビジネスモデルやイノベーションの構築ができずに、よりコストが安く同等品質である韓国企業に徹底してやられてしまった。

自動車業界は、米国ビッグスリーの政治圧力から、米国内で工場をかまえ輸出に頼らない生産を構築してきた。それでも現代自動車にはサムソン、LGと同様の戦略でこれからは市場シェアを奪われ続けるだろう。

韓国では、政治と経済が一体で、官僚や政治家が企業トップと同行してマーケティングから営業まで行っている。原発事業ではサウジアラビアに日本の東芝を打ち破り、東芝を下請けとして使うほどだ。事業をパッケージ化し、政治を動かすというのは、日本では政治と企業の癒着と言われ許されないだろう。

もし、韓国にサムスン、LG、現代自動車、ポスコといったグローバル企業が無かったら、未だに東南アジアの貧国と同じ発展途上を彷徨っていただろう。韓国は日本の成功事例を学び模倣化を徹底して行った。日本から学ぶことがなくなりつつある今では、米国型の新自由主義経済やイノベーションの在り方を模倣している。

その過程で、貧富の差は拡大し不満も出ているのは事実だ。それでも日本のように20年もデフレで経済が停滞していることに比べたらずいぶんましなのだ。
韓国は意図的にウォン安政策を行っており、ガソリン代など輸入物価が高いという庶民の不満もある。それでも円高の日本とガソリン代は変わらず、電気代は3分の1、食糧物価など生活必需品などもほぼ全てのモノが日本より安い。

それに引き換え、日本は電気代は先進国の2倍以上、米は3倍以上と円高なのにあらゆるものが高い。その負担は消費者である国民に重くのしかかっているのだ。

企業がグローバル化したため、韓国でも日本でも欲しいものは買える。電機業界の家電に関しては日本メーカもサムソンも海外での販売で台頭に競争しておりその負担を国民がしょっているなどということはない。日本ではエコポイントによる家電業界への財政出動があり消費者は得しているような錯覚に陥ったかもしれないが、国民の税金から負担しているのであり得などしていない。
自動車業界には関税の壁があり、日本も韓国もそれぞれ9割近くが自国の自動車メーカに寡占されている市場であるが、それでも外車の選択肢はある。日本では韓国車はほとんど売れず、韓国で日本車はほとんど売れない。関税の壁もあるが、お互い自国の製品の方が上だと思っている消費者感情も大きいだろう。

悲惨なのは、パナソニック、ソニー、シャープ、NECのような日本メーカを救済することである。日立は家電を辞めたので少しはましになった。日本の公共事業で優遇され暫く国内市場では生き続けることはできるだろう。それでも海外のメーカを締め出せば損をしその負担をするのは消費者である国民である。
日本で何社も液晶パネルを作り続ける必要はないし、テレビメーカもこんな数はいらない。

むしろ韓国国民より不幸なのは日本国民だ。

Comments