›6 21, 2010

加熱する一般照明市場

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一般家庭用ではLED照明(電球)が注目され、事業用やマンション施工や植物栽培工場ではLED照明やCCFL照明(液晶バックライトで使われてきた冷陰極ランプ)が注目されている。
新しい市場として注目されているのは、日本だけでなく先進国全体のようである。世界的には、地球温暖化防止の観点から白熱電球の生産・販売が先進国において法律で今後禁止される流れがあるのが大きな要因である。

日本においても経済産業省と環境庁が地球温暖化防止の観点から電機メーカに生産・販売中止の要請を出した。
さらに、エコポイント制度によるポイント交換にLED電球が手ごろであるという事情から、期間限定の特需ではあるが注目されている。

今後急成長が期待できる市場ということで、既存のランプメーカのみならず新規参入が相次いでる。
特にLEDに関しては電球や蛍光灯と違い、法律などで定められたPSEのような基準が無く、品質の悪いものも多く販売され問題も多発している。


■家庭用電球の置き換え
家電量販店には、これまでランプを販売していた電機メーカによるLED型電球、シャープのような新規参入の大手電機メーカや品質の怪しい輸入販売のLED型電球と多く販売されている。また白色電球も販売を続けており、蛍光灯(HCFL)をスパイラルに曲げたタイプの電球も販売されている。さらには、白熱電球に類似はするが生産を中止しないクリプトン電球であったり、LED同様の消費電力と長寿命のCCFLタイプの照明も販売されている。

一般家庭で導入するにあたり重要なのは、費用対効果と照明の品質がある。

・費用対効果
白色電球とそれ以外の照明の初期費用とランニングコスト(電気消費量と寿命)で費用対効果が換算できる。

電気代の換算方法はつぎのように算出できる。

1kWh21.7円/1時間
(※東京電力・従量電灯B契約・120kWhをこえ300kWhまでの概算)
白熱電球は定格寿命約1000~2000時間であり、60Wタイプの消費は54W相当である。

1時間当たりコストは約1.3円で、商品単価100円~200円で考えてみると、1日8時間で年間約1200円と算出される。

コスト観点で他の照明に切り替えるには、この費用を下回る必要がある。
1年間で元が取れるのは蛍光灯スパイラルタイプである。

商品単価は1100円程度で寿命は6000~10000時間程度で、同様に約1160円程度であり、わずかに安い。
しかし、商品単価も大手ブランドでなければ500円以下のものも存在する。

次に、LEDタイプで考えてみたときに、まず比較が難しい。
単純に60W相当と表記のあるものでも、実際にはLEDは配光角が小さく暗く感じるケースが圧倒的に多いようだ。
これは明るさ表記のルーメン値で比較しても単純に比較できないようだ。
また、大手ブランドが3000円程度に対し、輸入販売品では2000円以下のものも存在するが、その品質がわからない。
寿命で考えると10年使える計算になるが、製品保証が10年では無い為これもまた不明瞭である。

金額の幅も大きく、品質幅も相当大きいが、いずれにせよ大手ブランドのLEDでは初期費用の負担が大きい為、3年以上はもとは取れないことになる。
CCFL型電球は1500円~2500円程度の販売価格のようであり、蛍光灯に近い初期費用で長期間使用と電気代削減ができるようだ。

長時間つかう電球を交換することによって、短期間(それでも1年以上)のうちにもとが取れることになりそうだが、夜間つけっぱなしの玄関外などの用途に限られるだろう。

このように考えるとLEDタイプの電球で安くなるというイメージには大きな疑問が残る。

・照明の品質
LEDでは多くのクレームが発生している。LEDは一般的に「暗くて眩しい」と表現されるように配光角が小さく照度の低いために直下ではまぶしく、横は暗いという問題がある。また品質の悪い業者が規制を受けずに販売しているのもあるだろうが、ちらつきなど色々とクレームがある。
白色電球と同じランプでは無いのでしょうがない面もあるとは思うが、ぎらついた感じのする光は慣れないものである。
もっとも個人差が大きいと思うので、直接照明で使うには店頭で確認できるようであれば品質の確認は必要だと思う。

このように見ていくとテレビ等でのLEDの電気代の安さというのはトータルコストで考えると大きな疑問がある。LED照明の光の品質に関しても疑念が残る。

■事業用蛍光灯の置き換え
家庭用よりもむしろ事業者用、植物栽培用などの用途での新型照明の市場性が高いと思っている。

事業用は例えばコンビニのように24時間使用するところなど、使用時間が圧倒的に長いのと使う量が多いために電気代削減効果が大きいことが1つの理由としてあげられる。また、改正省エネ法に伴い、事業者のエネルギー削減が求められるようになり、照明が削減効果が大きいという点もあげられる。これは居酒屋、飲食店、コンビニなどのフランチャイズ業者にとっては非常に大きな問題である。
さらに、経済産業省による「エネルギー需要構造改革推進投資促進税制」という制度や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による補助金や各地方自治体も補助を行っている点もあるようだ。

このような背景から、製造業の工場からホテル、コンビニ、量販店、ホテル、病院、居酒屋チェーン、倉庫、アミューズメント施設、ファーストフード、ファミレス等まで多くの導入が検討される企業と市場が登場している。

大手電機メーカはLED照明器具にまだあまり参入をしていない状態であるのと、成長市場であり特需的要素もあることから新規参入が非常に多いようだ。
事業用では主に蛍光灯からLED蛍光灯タイプやCCFL横長ランプへの置き換えを行っている業者が多いようである。
白熱電球に比べると消費電力が少ない蛍光灯からの置き換えではあるが、それでもLED、CCFLともに40~50%程度の消費量で10年間程度交換が必要無いようである。
(ここでもLEDは規格が定まっておらず、LED自体の品質や器具によって明るさなどメーカによって大きく異なっている)

一般家庭と違い事業者ではランプの発注や交換にも人件費がかかり、また使用する本数が桁違いに多い為コスト削減効果だけでも非常に大きいと考えられる。

そして、配線替え工事が伴うため、照明販売だけでなく施工業者、建築業者など多くの業種の販売ニーズも満たしているようだ。

ただし、事業用でもLEDの業者による品質の悪さや色具合が変わり商品の見え方が変わるなどのクレームが相次いでいるようである。
LEDは特に規格もないため、海外で調達した粗悪品で照明をつくってしまう業者も多いようなので注意が必要である。これはLEDがランプというよりも発光する半導体という認識から規制を受けなかったのかもしれない。またLEDやランプには稼働させるためのインバータ技術も必要であり、そちらが問題となるケースも多いようだ。

家庭用、事業用どちらも問題点は多く見られるが、それを上回る魅力もある。
考えてみれば照明というのはエジソンの発明に始まり、長いこと電球と蛍光灯という製品が使われてきた。次世代照明は他にも有機ELの紙のように薄い照明も登場してくるだろう。問題が多いのは新しい技術の幕開けであり、照明の歴史の転換期であることの証明なのかもしれない。


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