›8 16, 2009

続・資本論 (まんがで読破)|マルクス、エンゲルス

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まんがで読破シリーズはかなり読んでいる。古典書、名書をまんがにしたシリーズ本だ。その中でおすすめなのが「続・資本論」だ。マルクスが体系化しエンゲルスが書物にした歴史的名書である。米国では共産主義の失敗とかつての敵対国文化からほとんど注目されていないが、本当は今こそマルクスの資本論を読むべきだと思う。
現在の資本主義は末期症状を迎えており、資本主義の末期から共産主義が生まれるのだ。
さて、続・資本論の良いところは、マルクス、エンゲルスの主張や理論が随所で説明されているところだ。
貨幣についての説明から、余剰利益についての説明が続く。

ストーリーで、消費者向け製品をつくっている工場が中心に出てくる。ここの雇われ経営者は労働者を大切に大切にしたいという意向がある。他方、オーナーは徹底した資本家で非常に合理的な考えを持つ。
経営者は労働者の待遇を良くしたい思いから、機械を導入して生産を拡大し利益の拡大を目指す。順調に行くのだが、機械が生産の主役に変わり、労働者は誰でも良くなってしまう。
これは日本の製造業の現場で行われていることと同じである。労働者の価値が下がり、派遣社員は生産調整の手段となってしまった。

日本の製造業はロボットや製造装置に投資を行っているのが強みだが、逆に労働者の付加価値がそれによって下がっているのである。労働集約的に人手で生産が行われている中国などの工場の労働者よりも生産に対する労働者の付加価値率は日本の労働者は低いことになる。

そして、機械を導入するために設備会社に発注をするのだが、消費者向け製品をつくる工場と違い、生産向け製品をつくる会社というのは前者に経営が依存している。マルクスが「不均等的拡大」と呼んだ現象である。
日本でいえば工作機械メーカーや半導体装置メーカーや町工場だ。自動車や電機がリストラやコスト削減努力で黒字化しても、設備に依存しているメーカーは新規設備が増えないことから黒字転換しない。工作機械や装置メーカーは売上が7割も落ちている。

これらの産業が衰退すると労働者の賃金や職が減ることから消費者向け製品も売れなくなる。不況と恐慌の悪循環である。

現在の先進国がまさにその状況である。違うのは政府による過剰な財政出動と金融緩和である。本来需要が無いものを無理に需要を作り出し、潰れるべき企業を延命させているのだ。この対策が無かったら中小企業のほとんどが潰れてしまい、失業率は30%を軽く超え、先進国経済はガタガタに崩壊し、飢餓、暴動、戦争の勃発という事態にさえなるのではないかと思う。

しかし、過剰な政府によるセーフティネットはモラルハザードを生み、短期間で済むべき経済や産業の転換を遅らせてしまうことになるだろう。

さて、長くなったが続・資本論を読むと資本主義の限界がわかり、マルクス主義から多くを学べることに気付くであろう。



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