›6 18, 2008

中小企業白書2008版を読んで

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2007年度は中小企業の業況が悪化している様子が「中小企業白書2008」に書かれている。
主な原因はやはり「官製不況」だと思う。

消費者や労働者保護のための規制により総合的には全体の経済発展の足かせとなっているのがデータとして浮き彫りになっている。また、一時的とは思われるが、原油・材料の価格高騰の影響は大きく、。構造的な問題としては、少子高齢化・人口減少は解決不能に陥っている国家の大問題であり、将来の国家の発展の足かせとなるだろう。

また、中小企業では、低い労働生産性、IT活用の遅れ、グローバル化対応の遅れが問題とされている。


□経済成長率の公式

経済成長率=就業者数増加率+労働生産性上昇率

この式(指標)は実は始めて見るかもしれない。しかし、感覚的には正しいと感じる。
中でも就業者数増加率のインパクトは非常に大きく、人口増加率をその国の経済成長率と近似されることはよくある。
米国なんかは移民を積極的に受けいれ(というか基本的に原住民だったインディアンと奴隷として連れて来られた黒人以外は移民かその子孫だ)、人口が増大するのが経済発展の希望的観測として捉えられている。

日本は労働人口が減少し、移民は受け入れないような島国根性の国家なのだから、労働生産性を上昇させる以外経済成長はあり得ないということになる。

この労働生産性だが、海外展開している企業の方が高いとうのに驚いた。製造業で言えば、海外で工場を持つのは、基本的に人件費が安いからだ。その分、国内に残る企業というのは合理化・省力化を進め生産性が高いはずだと思っていた。

しかし、実際は、海外展開により労働生産性が向上した企業が4割、5割は変わらないという結果だった。また、海外展開に伴う国内生産の縮小をしていない企業が8割というのも不思議な事実である。

日本の労働生産性の水準は、米国の7割にとどまる。先進国の中ではダントツに低い。特に製造業において中小企業の労働生産性は大企業の半分近い。これは自社でしかできない技術を持たない為、熾烈な競争にさらされているからだと思う。もしくは、大企業の言いなりになってしまっているのではなかろうか。

□労働生産性の公式

労働生産性 = 付加価値額/労働投入量
         = 資本ストック/労働投入量 × 付加価値額/資本ストック
         = 資本装備率 × 資本生産性

資本整備率は製造業では、中小企業は大企業の半分以下であり、資本生産性は大企業と変わらない。

資本装備率とは、従業員ひとり当たりの有形固定資産額のことである。つまり、中小企業の労働生産性が低いのは、設備投資が充分されていないということをデータは示している。
だが、中小企業者にとっては設備投資は負担であろうし、労働生産性を意識している中小企業者は少ない。

□生産性の高い中小企業の特徴
ITを活用し、グローバル展開をしている。ITにより合理化を進め、設備投資による固定費増大はスケールメリットを活かし販売拡大から海外販売に繋がるのかもしれない。
また、製品・サービスの差別化ができている傾向が高い。そして、労働生産性が高い企業の方が研究開発に積極的である


□中小企業と大企業の格差拡大
大企業と中小企業、特に小規模な企業との間の利益率の差が拡大している。これには構造的問題があるとされている。それは、中小企業が消費の低迷の煽りを受けやすいこと、グローバル化による海外との競合の影響、公共事業の減少があるようである。

確かに、消費低迷で大企業が煽りを受けても、利益を出すために中小企業からの仕入抑制、コストダウン対応をするため影響が大きい気がするし、同じ製品を仕入れるのなら、海外の安いものを仕入れるのは当たり前のことである。金型など加工に関しては、設備さえ入れれば今やどこでも同じ品質でつくれるほどになってきているのが現実だ。

また、ここ10年間は自営業者の収入は、会社員の収入以下である。会社員より遥かにリスクを背負っているのに、収入が低いのであれば経済的には自営業を営む利点が無いのだが。
廃業率が開業率を上回るのは、経済合理性の結果では無かろうか。
さらに、約7割もの中小企業が過去3年程度で経営の継続が困難であると感じたと回答している。困難な状況下では、「賃金カット」、「人員削減」、「個人資産の投入」、「個人名義借入金の投入」と会社生存のためには過酷な対策をしている。

□資金調達の問題点
日本の中小企業の資金調達手段はかなり限定されている。まず銀行からの借入に頼っている。
データでは書かれていないが、中小企業においては経営者兼オーナーの個人保証が求められ(こんなのは日本と韓国くらいだ)、事業のリスクが個人の生活リスクと直結しており非常にハイリスクだ。しかも、エクイティファイナンスの投資残高は国際的に超低水準である。
尚、無担保かつ第三者保証なし借入の割合が100%の中小企業は、全体で13.6%で情報通信業では31.3%である。製造業等においては、業歴が古く慣習から保証を取り続けていたり、経営と所有の分離がされていないことから金融機関が査定ができないことや、経営陣に対する信頼が無いのではないだろうか。

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