›2 18, 2008

亜玖夢博士の経済入門

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掲題とは無関係に思えるかもしれないが、最近こんな事件があった。

「アイ・シー・エフ、元社長ら4人を逮捕・不正株式交換容疑」http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080213AT5C1300R13022008.html

記事によると事実上債務超過に陥っている会社を株式交換で買収する際に、DCFで企業価値を過大に評価した、デューデリジェンスをM&Aのために恣意的に行ったという文面である。

債務超過企業であれば、純資産がマイナスなので純資産方式では株価の算定はマイナスになる。赤字の会社であれば、PERによる類似企業との比較で株価が付けられない。
将来の利益を見込んで株価を算定するためDCF(将来利益を現在に割り引く)になる。

これは買収先の事業計画に基づくことになるが、計画通りに進むとは限らない。但し、今回のアイシーエフ(現オーベン)事件では、故意に高く評価して買収先企業から暴力団に資金が流れたことが決定的なんだろう。

ライブドアと類似されて扱われているのは、ライブドアは赤字企業を株式交換で買収させ事業再生させることに優れていた。違法行為としては資金の還流として株主の金を市場売却させ自社利益としたことである。

指南役として、元ライブドアの榎本大輔氏がいたようである。またライブドアを監査した田中慎一氏が逮捕されている。梁山泊が絡んだ事件は数年前からネットでは一般の者が魑魅魍魎な登場人物やファンドを独自に調査しており、それが週刊誌で取り上げられたり、警察が関連図をつくったりしていたのでいつかはこのように逮捕者がでる事と思っていた。実際、ネットで書かれている通りのスキームと登場人物での逮捕劇である。

しかし、これはずいぶんと分かりやすい例であるが、暴力団関連企業(フロント企業)が上場企業を食い物にするスキームはより複雑になっているので摘発が難しいと思う。

さて、掲題の本であるが、本の主題としては裏社会であるサラ金、マルチなどに嵌る人間の心理を科学的アプローチによって原因の究明をしており、ゲーム理論や心理学、さらには裏社会のあまり紹介されていない活動が書かれている。

この本の最終章には裏社会が上場企業を食い物にする物語となっているのだが、実際にある話だと思った。

それは、暴力団が上場企業の多数の株を買い占めて支配しているのだが、別の団体がその企業を食い物にする話で、一般人を数多く使うスキームが使われている。

実際、歌舞伎町ではフロント企業は一般人を活用する事によって、その存在を消したり、民主主義的アプローチを取っているように見せかける手口が使われる。

例えば、フロント企業がサラ金業をやり、一般人に金を貸し付けるが当然返せないので、その人間を奴隷のように扱うことが可能になるのである。
見聞きした話では、金を返せない人間は自己破産するのだが、その前に携帯電話やクレジットカードを可能な限り申し込みさせられる。それが裏社会で出回る。

だが、ここではさらにすごい物語で、証券会社に口座を作り、インサイダーを隠す手段として使われている。

こうなるとそもそも裏社会との関連を指摘するどころか追跡も困難になってしまう。

「亜玖夢博士の経済入門」は普通の社会人が読んでも裏社会中心と思うかもしれないが、もうかなりの部分で表社会と繋がっているのだと考えながら読むと有意義だ。

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