›8 06, 2007

製造業の3D CADの現状

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ずいぶん前に「インクス流!―驚異のプロセス・テクノロジーのすべて」を読んで感激したのを覚えている。インクスという会社は金型屋で、試作をつくるメーカーなのだがそこは昔ながらの大田区にあるような金型屋とは全く違うというのをテレビなどでも良く取り上げられていて面白いと思った。

昔ながらの製造業は、昔ながらのやりかたでまだ生産しているが、属人的(職人の能力に支配されている)ためなかなかプロセス改革ができないでいる。
もちろん岡野工業のように職人でないとできない金型もあって、少人数にもかかわらず世界最高のものをつくる金型屋もある。
そういった会社がすばらしいという風潮のほうが強いのだが、品質や高度な技術という側面で見たらすばらしいだけに過ぎない。

製造業のすばらしさは、生産性・スピードといった別の側面からも見ないと図れないと思う。
後者の側面から見ると、インクスというのは画期的だし、すばらしい。

まず、職人を排除して、アルバイトでも金型をつくれるようにした。生産工程の標準化だ。それから、工程の徹底した合理化によるスピード化。
金型といっても光造形による試作なのだが、数時間で試作ができてしまう。

そして、一番重要なのは、このような徹底した欧米流の合理化を実現した企業が無かった事だと思う。

さて、その工程の標準化や合理化を進める道具として3D CADとコンピュータ化がものを言う。この分野は日本は遅れている。インクスではファラオと呼ぶメインコンピュータが全て支配しているということだった。

さて、3D CADは複雑な形状をつくる金型などで普及してきたが、まだまだ製造業には普及していないのが現状だ。

CADとコンピュータの統合にしてもしかり。

その背景には、既成概念の切替ができないという点が一番大きいと思う。これは日本人の保守的特性なんだろうと思う。

3Dでは2Dのような三角法による書き方が不要になる。立体をオブジェクトとしてそのまま書いていく。
それができないのが日本人的特性なのだろう。

ドラフターと呼ばれる手書きの設計から2Dは、結構すんなり日本は移行できたらしい。これはただ手で書いていたのはコンピュータ上に書くだけの違いだ。つまり、日本人はカイゼンというのは世界一得意なのだ。

でも、イノベーションには弱い。

3Dで書けない。既成概念を変えることができない。

3D CADはなかなか普及しないのは日本だけで、海外では進んでいる。中国でも使われてきている。2Dでは検証不可能な解析だとか、干渉チェック、合理的な製図が日本では進まない。

そういった一面があることを聞いて、日本の唯一世界に通用する産業である製造業の将来が心配になった。

3D CADに限らず、意識の改革の必要性をひしひしと感じます。


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