›5 29, 2005

アマゾン・ドットコムの分析(2)

Category: 経営戦略 / 0 Comments: Post / View

今回もアマゾン・ドットコムを通じて新産業を研究しました。
アマゾン・ドットコムについては以前から興味があったので色々情報を集め
ていたのですが、今回本を読み直し、昔の記事を読み直すと新たな発見がた
くさんありました。

創業者のジェフ・ベゾスの経営力、独創力は突出しています。

今から1995年を振り返れば、あたり前に見えることが、当時は違いまし
た。
日本が敗戦から40年そこらで経済大国になったのも、今から考えると当た
前ですが、当時は誰が創造できたでしょうか?


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▼ アマゾン・ドットコムの分析(2) ▼━━━━━━━━━━━━━━━
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<<前回からの続きです。>>
(5)時価総額
時価総額は以下の公式で求められる。

  時価総額 = 総発行株数×株価

日本の上場企業の時価総額を株価から換算してみると驚くべき事実がわか
る。
例えば、システムインテグレーター(情報処理産業)の某社の株価から時
価総額を算出してみると、その企業の純資産を下回っていることがわかる。

時価総額は企業の将来の利益を現在価値に換算したものであるから、この
企業は将来利益をまったく生み出さない、しかも現在の純資産を解体して
売ってしまったほうが良いと市場から宣告されていることと同等である。

情報処理産業という知識集約産業でこのありさまであり、他の産業では
燦燦たる状況の上場企業が多数ある。日経平均を見ても、日本の上場企業
は将来価値を生み出さないと市場が判断してると取れる。

アマゾン・ドットコムは1999年夏の米国景気最高潮の時期に、世界最大
のディスカウントチェーンのウォールマートと同じほどの時価総額に達し
た。(2兆円を超えた)

(6)アマゾン・ドットコムの生い立ち
ジェフ・ベゾスは年率2300%の勢いで増加しているインターネット・ユーザ
の増加からインターネットを利用した流通市場での商売を考えていた。

販売するプロダクトは既存市場に流通する商品を考えていたようである。
様々な商品をリストアップしてレコード業界と書籍業界に絞ったが、ずば抜け
たトップ企業がない、参入障壁が低いという理由から書籍業界に決まった。
「以外にもレコードと本がリストに残った」とジェフが言っていることから、
特に本を売るという気持ちよりもインターネット・インフラという気持ちが強
かったことが伺える。

実は94年、ジェフが会社を辞めて起業準備をしたものの、インターネットで買
い物をしたことが無かったようだ。
インターネットビジネスを立ち上げるため、シアトルに渡り、会社登録を済ま
せ、人材を確保した段階で初めてオンラインショッピングでルータを買った。

既にこの時点でアマゾン以外にインターネットで本を販売している書店は存在
した。

インターネットで本を売る会社にはclbooks.com(コンピュータリテラシーブッ
クショップ)があった。まだインターネットが普及する前からeメールを利用
して本を販売していた。
シリコンバレーに店舗を構え、コンピュータ専門書籍販売のためにeメールの
利用をしていたに留まっていたが、94年の段階ですでにweb上にもサイトを立
ち上げていた。他にも、books.comがサイトを立ち上げていた。


□スタートアップ
起業するに当たりジェフはシアトルに越したのだが、そこでコンピューター・
プログラマーを探した。

友人の紹介で何人かの実力のあるプログラマーと面談をし、その中でジェフ
のイメージにぴったりの優秀なプログラマーを獲得することができた。
結局2人のプログラマーを雇って、創業準備をしていくのだが、この優秀なプロ
グラマーを獲得できたのが成功要因のひとつであろう。

何人もの平凡なプログラマーはいらない。超優秀なプログラマー1人が何百人
もの価値を生む。
コンピュータシステムを扱い、マシンとプログラムが付加価値を生むことを
ジェフ自身がこれまでの経験から熟知していたことだ。

ジェフがプログラマーを雇った段階では、まだ明確なビジネスプランはイメー
ジしきれていなかったようだ。ただ、最初から完璧なものをつくろうとしてい
たことは確かだ。

既存の本のインターネット販売における盲点を補うサービスが必要と認識して
いた。盲点とは、インターネット販売が消費者の立場にたったビジネスをして
なかったことだ。一般の消費者のニーズを洗い出しただろう。

今から考えれば、容易に想像できるが消費者のニーズは以下のことが挙げられ
る。

 1.簡単な操作
 2.安全・安心な商品購入
 3.インターネットの利点を利用できる。

プログラマーだけでは、ニーズを満たすシステムをつくることは難しかった。
システム全般の管理を行った経験があり、副社長のポジションにいたこと、が
ジェフのビジネスプランの根底にあった。

プログラム開発はジェフを含めて3人で行った。
雇ったプログラマ2人が事務所(まさにジェフのガレージ)に行った時にはSparc
ステーション(UNIXマシン)1台と全米書籍販売業者協会からの資料程度しかな
かったと言う。

□amazon.comの名前の由来
アマゾン・ドットコムの名前の由来は簡単だ。
単純にAから始まる名前のほうがインターネット上の検索ページ等で、最初のほ
うに掲載されるからだ。アート引越しセンターもハローワークの最初のページ
に掲載されるように社名をつけて成功した。

オープン後、この目論見は成功した。

また、ジェフはアマゾン・ドットコムと必ず自社名を「ドットコム」までつけて
表現した。
社員からもドットコムをつけるなんて、と今までドットコムをつける企業がいな
かったため納得がいかないという意見が多かった。

だが、アマゾン・ドットコムと呼ぶことを首尾一貫通したおかげで、アマゾン・
ドットコムがインターネット企業であることが世間に認知され、またそのURLア
ドレスがすぐに覚えられた。

(7)業態の創造
当初ジェフが考えていた構想は
 1.インターネット専業の本屋
 2.在庫は持たない
があった。

そして当初は、ウェブよりもeメールを重要視していた。
94年時点では電子メール利用者はWebブラウザ利用者の10だった。
そのため、アマゾンでは当初ウェブ店舗と電子メール店舗を持ったのだ。
電子メール店舗の仕組みは、顧客が電子メールで発注をかけ、本をシステムで
検索して発注を書け商品を顧客に送るというかなり煩雑なプロセスだった。

現在はウェブのみによるサービスだが、実店舗は持っていない。

在庫ゼロという究極のビジネスモデルは一転した。現在では倉庫を持ち、在庫
をかかえており、物流を重要視している。

□消費者ニーズに対するアプローチ
 1.簡単な操作
アマゾン・ドットコムはどこよりも使い勝手が良いシステムを完璧に作るため
に、1年もの歳月を変えてオープンさせた。
これは非常に勇気のいる行動である。
年率2300%でインターネットユーザーが増加している市場に対して、もしかし
たら同じことを考えている者がたくさんいた可能性がある。
1日でも早くサイトをオープンさせなければならない、という強迫観念を払拭し
完璧なシステムを目指したのだ。

また、オープンまで時間がかかるということは、それまで収入が無いというこ
とだ。
社員に対する給与、システム投資のために数回大幅増資を行った。

当初CEO、会長として会社の普通株1千20万株を1万ドルで購入。
また1万5千ドルを無利子で会社に融資した。94年11月には2万9千ドルの追加貸
付を行った。

翌年には自分の資産にたよっていられなくなり、58万2千528株を1株0.1717ドル
で父に売却して資金をつくった。

ラッシュテスト(システムの本番運用を想定した総合テスト)においては、友人
ら200人以上を動員して実際に使ってもらった。
この時点でシステムのプログラム・バグをほぼ洗い出し、その後プログラム改修
を行った時点でビジネス・モデルはほぼ完成した。

 2.安全・安心な商品購入
当時、インターネットでの商品購入は、消費者にとって非常に敷居が高かった。
実際、インターネット上でクレジット番号・暗証番号の盗聴といった事件や、シ
ステムにハッカーが侵入し、顧客情報が漏洩させるという事件も起こっていた。

そこで、完全にセキュア(安全)な仕組みを構築した。
それは、クレジット番号と暗証番号を、オフラインシステムとすることだった。
ウェブサイトで顧客がクレジットを入力したら、アマゾン・ドットコムの社員は
クレジット番号を入力されたマシンからフロッピーカードに移し、物理的にイ
ンターネットからオフライン状態にある別マシンに移した。そちらのマシンで
はクレジット信販会社とつながっており、クレジット決済が可能となる仕組みだ。

オープンと同時にいかにアマゾン・ドットコムが安全かをアピールすることに成
功した。
インターネットの安全性の確立と、インターネットショッピングの普及からこ
の煩雑で過剰なポリシーの仕組みは廃止された。

 3.インターネットの利点を利用できる。
インターネットの利点を追求する多くのバーチャルモールが存在したが、アマゾ
ン・ドットコムが次々に打ち出したアイデアは郡を抜いていた。

システムはデータベースで情報が格納されているので、検索機能に非常に優れて
る。

サイトオープン後、すぐに以下のサービスを開始し注目を浴びた。
・Editors
過去に買った本を基に顧客にあった本を紹介するサービス
当初はアマゾン・ドットコムの社員が本に対する書評を書いた。じきに本を購入
した消費者が感想を書くコーナーが設けられた。
本を購入する上で重要だが、実際の本屋には無いサービスだ。

・Eyes
顧客の好きな作家や関心のテーマの新刊情報を通知するサービス
受身で買ってくれるのを待つのではなく、顧客の嗜好に合わせた本を紹介する
サービスである。
コンピューターシステムには顧客のこれまでの購買履歴が蓄積されるし、顧客
情報をすべて持っているので、どの顧客にどの本を紹介するかを通知する仕組み
は簡単につくることができた。また、コストもほとんどかからなかった。
本を購入する上で重要だが、実際の本屋には無いサービスだ。

このように、ジェフ・ベゾスのイマジネーションとリーダーシップをもとに、ア
マゾン・ドットコムは、前例のないやり方ですべてやった。

そして実は、アマゾン・ドットコム社員は誰も流通を知らなかった。

<<次回に続く>>
次回は新しい産業の構造と顧客満足度について。

(参考)

アマゾン・ドット・コム
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デビィ夫人は、所詮第3夫人です。本人はとても気にしているようです。

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