›5 29, 2005

アマゾン・ドットコムの分析 (1)

Category: 経営戦略 / 0 Comments: Post / View

今回からしばらくアマゾン・ドットコムについての研究を通じて、新産業
(インターネット企業、パブレス企業、フランチャイズ企画企業等)と
既存産業(設備産業、製造業のうち大企業)との比較を行っていこうと
思います。

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▼ アマゾン・ドットコムの分析 (1) ▼━━━━━━━━━━━━━━
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(1)アマゾン・ドットコム
アマゾン・ドットコムはマイクロソフトが初めてインターネット対応OS
としてWindows95を市場に投入し爆発的ヒットを飛ばした1995年に開業し
た。インターネットが米国で爆発的なブームとなったその牽引役とも言え
る。アマゾン・ドットコムが当時一線を画していたのは、インターネット
上のみで本を売るという完全なバーチャルモールだったからだ。
実店舗を保管する意味でインターネットを利用するクリック&モルタル型
とは異なり、完全なピュアプレイヤーとして注目された。

現在は本だけでなく、何でも売ることをモットーにCD、DVD、電化製
品、ゲーム、キッチン用品、オークションと多角化を進め、イギリス、ド
イツ、日本、フランス、カナダにサイトを開いている。
唯一変わらないのは、バーチャルモールであるということだ。

(2)ネットバブル
アマゾン・ドットコム創始者のジェフ・ベゾスは、年率数2300%のインタ
ーネット利用者の拡大を知り、車のなかで起業を練ったという。

そこにはかつてはコロンブスが未知の大陸を想像した姿、ビル・ゲイツが
未知のパソコン市場を制覇する市場を想像したのと共通した光景があった
のではないか。

ネットバブルと呼ばれ(実際そうであった)、わずかな資本から巨大な時価
総額を持つ企業へと成長させた。資本にはベンチャー・キャピタルやエン
ジェルが群がった。わずかな資本が巨額な時価総額へと変貌した。
アマゾン・ドットコムは創業以来売上ベースではウナギ登りだったものの、
利益は2001年第3四半期まで計上できなかった。それにもかかわらず
株価は上昇し続けた。利益の出ていない企業が過大評価されるという現象
をネットバブルと呼んだ。既成概念では株価や、企業の現在価値というも
のを説明することができない。

そもそも株価というのは企業の将来生み出す利益を現在の価値に割り引く
(換算し直す)ことによって導き出される。
そこにはリスクや金利を含む不確定要素がある。

アマゾンが黒字を計上した時期は、米国では既にネットバブルは崩壊して
いた。つまり、ネット企業の将来価値というものが誰からも疑問視された
後のことだ。ネットバブルが崩壊した原因は将来の不確定要素が増したこ
とが原因と考えられる。日本でのITバブル崩壊が2年も米国より遅れた
のは日本での将来の不確定要素(不良債権の処理難、構造改革遅延)が
顕在化するのが遅れたためと考えられる。

急激な株価の低迷により多くのネットベンチャーが淘汰された。淘汰され
た企業は将来の収益計画が無かったり、甘かった。

現在も生き残っているネットベンチャーは収益計画がある。日本ではこれ
からさらにインターネット関連企業の淘汰が進む。

(3)既存企業との違い
マイクロソフトのビル・ゲイツは600億ドルもの個人資産を持った。
平均的なサラリーマンの生涯賃金が3百万ドルとして考えると、何故こ
れほどの資産を持つことができたのかと不思議になるだろう。

ビル・ゲイツが普通の労働者の2万倍の労働力があったとは言えない。
だが、2万倍の価値があった。

ビル・ゲイツのつくったマイクロソフト社は驚異的なセールスを記録した
のだ。

アマゾン・ドットコム創始者のジェフ・ベゾスはビル・ゲイツやオラクル
のラリー・エリソンといった新興ソフトウエア会社の創始者の資産には
遥かに及ばないが、起業時の資本の小額さを考えれば企画力、経営力が
劣っていないことが分かる。

*ランキングは「フォーブス」のホームページから閲覧可能
http://www.forbes.com/2002/09/13/rich400land.html
ジェフ・ベゾスは1800(百万ドル)100位
ビル・ゲイツは43000(百万ドル)1位
ラリー・エリソンは15200(百万ドル)9位

ITソフトウエア産業、インターネット産業が既存企業と決定的に違うの
はそのスケールメリットの規模だ。

既存産業は決められた単価の労働者、工場設備が原価に付加価値をつけて
流通市場に送り出す。最終的に消費者の手に届く時には原価の何倍もの価
値となり、それが企業価値であり、スケールメリットだ。

ITソフトウエア産業、インターネット産業の労働者、工場設備にあたる
ものはコンピュータプログラムであり、インターネット通信基盤である。

これらは労働単価が無く、給料を払わずに済、場所代もかからない。
表現を変えれば、有形資産でなく無形資産ということになる。
その無形資産が消費者の手に渡る時には、既存企業の付加価値を遥かに凌
ぐ価値を生み出す。

一人当たり売上高や売上高対人件費といった財務指数は企業の規模に比例
してきた。既存産業は規模の拡大と共に労働者は増え、工場は増えた。
これらは景気とインフレに最も左右される。

(4)新産業
従業員の立場で考えると、価値のある労働力ほど高収入である。
いわゆる工場でのロボットの代わりの単純労働者は労働集約産業と呼ばれる
業務に従ずる。
コンサルティング営業やプログラマー、デザイナー、システムズ・エンジニ
アは知識集約産業と呼ばれる業務に従ずる。

自己の知識を活用し付加価値をつけた業務を行うことによって単純労働の
何倍もの価値を企業に与える。

労働者の限界はここである。近年は成果主義傾向だが、生涯賃金であれば
10億円程度が限界に違いない。高収入になるほど労働負荷、知識負荷、
精神負荷がきつくなる。

使用者、株主の立場では労働者とはまったく異なった視点となる。
労働者も工場設備もプログラムも同じ原価に付加価値をつける触媒にすぎ
ない。

ITソフトウエア産業、インターネット産業で成功した企業は減価を何倍
もの価値することが可能となる。

但しマイクロソフトはOSシェアが競争力の源で、フリーのLinuxが
市場シェアを高めたら潰れる可能性さえある。

アマゾン・ドットコムはマイクロソフトが潰れても潰れない。インターネ
ットという共通のインフラの上に成り立つビジネスだからだ。
但し、メイン商品の本というのがかつては強みだったが、欠点になり得る。
本だけを売ると必ず価格競争に陥るからだ。
かつてアマゾン・ドットコムが本以外の商品を売り多角化したとき、多く
のコンサルタント、アナリストが本業の本のみを売るべきだと言った。

だが、そうしていたら今存続していなかったかもしれない。ユニクロの
食品産業への多角化は単純なアパレル価格競争から避けるといった意味も
あったと思慮される。

つづく。

次回は時価総額、株価、収益率といった市場評価と実績を通じて新産業
と既存産業の比較を行います。

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