財政支出の削減や増税は、民間の消費を減退させGDPを押し下げる。すなわちデフレ下に置いてはさらなるデフレが進行する。
これは、不況時に財政出拡大や増税といった景気刺激策を訴えたケインズから「ケインズ効果」と呼ばれる。
これに対して、財政赤字が常態化し政府債務残高が莫大で財政が不健全な状態においては、人々は将来の財政破綻を心配し消費を控える傾向にある。即ち、現在の財政の不健全さが消費を低迷させ、デフレを深刻化していると考えることもできるのである。
この場合、財政引き締めによる財政健全化が将来の不安を解消し、消費が刺激される。先ほどの「ケインズ効果」と反対の現象のため「非ケインズ効果」と呼ばれる。
実際に、1980年代以降、デンマークやアイルランドなどで確認されている。
政府は税の徴収権があるので、財政破綻(国債のデフォルト)が起こったりする将来が想定されれば、とても大きな消費(例えば借金をしてまでの消費行動)ができず、貯蓄に励むだろう。将来の収入が減ることが想定されて、誰が住宅ローンという大きな借金を背負うだろうか?ましてや、変動金利での借金は国債の暴落から金利の急上昇の恐れもあるのだ。更には、政府が消費税増税を更に行ったり、固定資産税、所得税の増額を行った場合、国民の可処分所得は減り、勤労意欲も失われるだろう。
消費税も、税金を取られる思うと消費したく無いと消費に抑制が掛かり、所得税増額も、税金を取られると思うと勤労意欲が減退するものだ。
日本ではデフレの解消が最重要課題である。需要が供給を下回っている状況下で、需要を増やすことは最重要課題である。金融政策、財政政策両方を大胆に実施する必要がある。金融政策による量的緩和、インフレターゲットを中心に行うが、財政の支出もある程度やはり必要だ。
しかしながら増税は明らかに消費を減退させる。公共事業はある程度必要だが乗数効果の高い、必要なものに絞るべきだろう。
財務省は日本の財政は危機的状況であると言いながら、国債の格付けが下げられた時には、日本の個人資産が担保となり、国内で消費されていることなどを主張した。
「非ケインズ効果」は日本でも見られるのだろうか?