›3 09, 2010

ベーシックインカムの議論は本気?

Category: 政治経済(Political Economy) / 0 Comments: Post / View

ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障であり、政府が全ての国民に対して(世帯では無く国民個別に)毎月最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金(5万円-8万円程度)を無条件で支給するという概念である。
昨年、新党日本がマニフェストに掲げたり、貧困対策活動家が主張したり、ホリエモンが取り上げたりしたため、これまで経済学的にも政策的にもナンセンスだったのに取り上げれる機会が増えているようだ。
ナンセンスというのは、ベーシックインカムの概念自体が悪平等主義、社会主義的であり、ソ連の失敗を連想させるからであろう。ただし、最近議論されているベーシックインカムは、現在の政治体制を批判する意味合いで使われているようであり、大きな政府で政府の運用コストが高く、失業者や社会的弱者に個別にアプローチが十分にできないのであれば、運用コストがすこぶる安いベーシックインカムにした方が合理的かつ効果的であるといった主張が多くみられる。

ベーシックインカムが議論になるのは、やはり貧困層の増加が原因だろう。そして貧困対策が政府が十分にできないためだろう。失業率が上昇し、賃金も上がらない状況においては貧困層がどんどん増加する。それらに対して生活保護など個別に対策をするとなると公務員の仕事が増えるため大変な運用コスト増になってしまう。

また少子化対策としても、ベーシックインカムが効果的と議論される。子供手当のようなものだが、国民を年齢で差別せず一律に支給するため支出の少ない子供を産んだ方が得なのだ。併せて年金の減少や廃止も考えられる。現行の年金制度は年寄りが得をする仕組みであり不公平感が大きい。そうすると、社会保障制度が簡素化され、行政コストの大胆な削減が可能となり公務員をリストラ解雇できる。

そのようなことから現在の大きな政府を維持するよりもコスト削減が見込めるため、ベーシックインカムに必要な財源が確保できるのではないかと議論されている。
つまり、ベーシックインカムを主張する人の多くは、現在の政府の無駄を批判するためにレトリックとしてわざとナンセンスな政策を持ちだしているのではなかろうか。

実際にベーシックインカムが適用されると、デメリットが大きいことが目に見えている。まず働く意欲が減退される。より良い生活をするためや趣味として労働をすれば良いなどと思うかもしれないが、衣食住に困らなければ、労働に対して大きなインセンティブがわかないだろう。働くと損をするというモラル・ハザードにより、企業も雇用を確保できなくなり、雇用コストの上昇、賃金の上昇、インフレと悪循環に陥る。
政策も大衆迎合的に、どの政党がベーシックインカムの給付額を増やすかとか議論するのではないだろうか。

これまで人類は日々の生存のために狩猟や農耕といった労働をして存続してきた。これは他の動物も同じで自然の法則である。
日々の生存が保障されている世界というのは自然の掟に反する行為でうまくいかないと個人的に思う。しかし逆にそれこそが人類の英知という人もいるのだろう。

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