›2 14, 2012

深刻化する中国の労働力不足

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農村から都市への出稼ぎ労働者は「農民工」と呼ばれ、中国経済成長の基盤である。
安価な労働力により、製造業の賃金の安さから世界の工場として投資を呼び込み、今やGDPは米国に次ぎ、チャイナマネーによる米国債買いや政府系ファンドによる海外投資と飛躍的な成長と国際経済への影響力増大を実現してきた。

中国の旧正月、春節明けには毎年同じ光景が見られる。
製造業の労働者、農民工が里帰りしてそのまま戻って来ないのだ。その対策として企業側も賞与は春節明けに渡すなど対策をしつつも、それでも戻って来ない農民工は多い。筆者の知る工場(上海、深圳地区)の多くが2割程度戻って来ないと予想し、その予想通りとなっている。
上海近郊の工業都市、蘇州では3000元程度の給与と、かなり高額になってきておりASEAN地域においてはもはや安価な労働力とは言えなくなった。


中国の賃金は毎年10%以上上昇し、5年で2倍になる計算で増加している。
10億人を超える無蔵にも思えた農民工が足りなくなってきているのである。

現在も工業団地では、昼休みに隣の工場の募集に並ぶ労働者が多くいるという話を聞く。
彼らは機械の代わりに行う単調作業をこなす単なるロボットの代わりの労働力であり、工業団地内で今働く環境より少しでも条件が良ければそこに流れるのである。

沿岸部は大都市化し、賃金上昇に歯止めが利かなくなってきた。iPhoneなど多くの製造委託を行う巨大企業フォックスコンは、中国9つの拠点工場には数万~数十万人の農民工を抱えている。

その労働は過酷であり、近年も連続飛び降り自殺が相次いだことや、新製品情報を漏らした従業員に対して公安が尋問、暴行を行い自殺に追い込んだことも話題を呼んだ。極度の秘密主義であり、武装した警備員による暴行事件もあった。
それらの対策としてフォックスコンでは、飛び降り自殺防止ネットの設置、供養のための仏僧を雇用するなど行っているが、根本的な労務管理の改善がなされていないと感じる。

刑務所の労働とどちらが楽なのだろうか?

そんなフォックスコンは、成都に工場を建設。数万人の雇用を生むそうだ。

労働力が不足する一方で、「蟻族」と呼ばれる大卒で思うように就職できない若者が増加している。

このことからも中国の労働ニーズは単純作業、労働集約的、低賃金であり、知的労働者ニーズが低いというミスマッチが存在する。

2011年の中国GDP成長率は9.2%前後であり、CPI増加率は5%程度であった。
GDP成長率は鈍化し、中国は高度成長期成長期から安定期へと入ったと見られる。

不動産バブルは崩壊の兆しを見せるものの、都市化率はまだ50%程度であり、内需拡大の余地が大きい。農民工は少しでも待遇の良い工場を見つけ働きに出る。それでも日本の貧困層よりもまともな生活ができていない。

公共事業による景気対策も余地が大きい。

抑圧され、規制された社会で、如何に経済成長を遂げるかが中国共産党に課された使命である。賃金上昇圧力はもはや中国の製造拠点というビジネスモデル根底を変えていかなければならくなりつつある。こんな今も中国のどこかの工場で農民工によるストライキが行われているであろう。


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